ドキュメンタリー映画「ひなたぼっこ」
1999年2月、遊休農地での取り組みと、知的障害をもつ5人の若者たちの普通高校での生活をテーマにドキュメンタリー映画「ひなたぼっこ」を企画しました。そして、記録社と共同製作を行い、1年半かけて撮影、2000年秋に完成しました。2000年10月28日に千葉市で開いた完成試写会を皮切りに、全国で上映会を行いました。
「ひなたぼっこ」は文部科学省選定・千葉県推奨優良映画の指定をいただき、現在までに全国約80ヶ所で上映され、15000人以上の方に観ていただきました。知的障害のある若者たちが地域で共に生きる姿は多くの共感をよんでいます。
2003年夏には映画をビデオ化して、販売してきました。
2020年秋にDVD化し、販売しています。
映画製作にあたって 監督・桐野直子
彼らと初めて出会った日、私は大いに戸惑った。何せ話が通じない。それでも「ま、いいか」と気を取り直したのは、彼らに好奇心いっぱいの瞳で見つめられたからだ。あれから1年半、彼らが過ごすそれぞれの場所に出かけ、同じ時を過ごしてきた。それは、思いもよらず楽しい時間であった。最初の戸惑いがゼロになったわけではないけれど、「これでいいのかな」と思う。この楽しかった体験を、一人でも多くの方に知っていただけたらと願っている。出演者プロフィール
山田晶生 20歳
高校生活最後の一年間、晶生君は音楽部の一員としてドラムを叩いてきた。心もとないリズムに、顧問の先生から何度も怒鳴られる。が、飄々と受け流し練習を続ける。音楽部の仲間たちは、そんな彼に不安を抱きながらも一方で「頑張り屋」だと一目置く。いざ本番…。胸を張ってステージに立つ仲間ひとりひとりが、演奏の要となってひとつの音楽を作り上げてゆく。山本江美子 19歳
1浪の末に入学した女子高生活も最終学年を迎えた秋。江美ちゃんのいる3年1組は、文化祭の準備に追われていた。出し物は大型紙芝居。急がないと間に合わないかもしれないというのに、江美ちゃんは教室をウロウロ、踊ったりなんかもしている。「江美ちゃん」と声がかかると、ゆっくりと絵筆をとってみるが、あえなく失敗。笑い転げる級友たち。3年1組、みんなに穏やかな笑顔が広がる。一人として切羽詰まっていない。中邨淳 21歳
夜の校庭でサッカーに興じる高校生たち。定時制高校の短かい放課後をいとおしむようにボールを追いかける。淳くんも転がってきたボールを手で受け止め、ゆっくりとパス。みんなと一緒に走っているような歩いているような…。終始ご機嫌な笑顔に、仲間たちにも笑いがこぼれる。彼は、入学以来一度も学校を休んだことがない。幼馴染のガールフレンドが見立ててくれたかばんに教科書を詰めて、きょうもみんなと一緒の教室へ向かう。立石歩 17歳
授業中はよく寝ている。あきらめ顔で見過ごす先生もいれば、「立石、起きろ!」と一喝する教師もいる。しかたなく教科書開いたかと思えば、再び寝る。しかし、一転「やる気」を見せることもある。ゴールめがけて何度もバスケットボールを投げる。家庭科の実習時間には、黙々と裁断を続ける。そんな彼を、焦らず温かく見守る教師たち。彼が学校をサボったという話を聞いたことはない。学校には、不思議な魅力がある。石塚由幸 15歳
この春、由幸くんは高校生になる予定だった。しかし、その願いは叶わなかった。幼稚園も小・中学校も、地域のみんなと過ごしてきた彼にとって、高校もまた、一緒に進めるはずの道だった。確かに、スポーツも勉強もみんなと同じようにはできない。けれど、いつもとびきりの笑顔で周囲の人々を包み込んでしまう、明るくやさしい15歳。「高校生になったら、やりたいことがいっぱいあるんだ!」と、浪人中の今も話している。推薦の言葉
村山由佳(作家)
たとえば肌の色や宗教の異なる人々が入り混じって暮らす国の住人に比べて、私たち日本人が圧倒的に不幸なことの1つは、子どもの頃から「他者」と出会う機会に恵まれていないことだ。自分とは異質のもの(異なる個性、世代、考え方…etc)を持つ者との出会いに慣れていない人間は、いざそういう相手に出会ったとたんに過剰反応を示す。攻撃し、排斥し、あるいはとことん無視しようとする。少年犯罪もいじめも差別も、問題の根っこは同じなのだ。もしも本気で子どもたちを変えていこう思うなら、まず大人から変わってみせなければならない。この映画がきっかけとなって、今までの「普通教育」の普通さに少しでも疑問を持ち、考えようとする人が増えてくれることを祈る。いわゆる「混合教育」や「他者との共生」は、本来なら特殊なことではない。世界に出れば当たり前の状態、これからの社会全体が目指すべき状態が、学校教育の場において特殊であることこそが問題なのではないだろうか…。
山田真(小児科医)
「知的障害を持つ子どもも普通学校に入学し、卒業している」と言うと半信半疑の顔をする人は多い。そういう人は「授業についていけない子どもがどうやって高校生活を送っていくのだ」と思うようだ。実際に楽しい高校生活を送っている知的障害児は全国に沢山いるから、その様子を詳しく語ることはできるのだが、なかなかイメージされにくい。しかし今、わたしたちは「ひなたぼっこ」という映画を得た。この映画を見た人は、障害児と健常児がきわめて自然に仲間になっている姿に驚くかもしれない。また障害児がのびのびと普通高校での生活を送っている様子にも驚くかもしれない。しかし、共に生きようという意志の存在する所では障害者と健常者の間に壁など存在し得ない。障害児を受け入れる意志を持った高校が、さまざまな工夫をして障害児たちの高校生活を保障している様子を1人でも多くの人が見てほしいと思う。それはわたしたちの生きる社会の理想形を示唆しているからだ。DVD販売
「ひなたぼっこ」DVD : 1枚 1,500円 (シナリオ付き)
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